子ども達に将来を掴む力を
PLASの支援のひとつに「ライフプランニング支援事業」があります。
貧困家庭のシングルマザーたちの多くは、エイズで夫を亡くしていたり、初等教育を中退していたり、また自らもHIV陽性で治療中であったりします。そのため、子どもの成長や発達、進路についての知識や情報を持っていない場合が多く、子どもたちに必要なサポートができません。
そこでPLASでは、そうしたシングル家庭の保護者が、子ども達の発達や教育に関する「保護者としての必要な知識」を身につけて、子どもたちが自分の意志で将来を計画し、選択できる力をつけるための適切なアプローチが出来るよう、カウンセリングを通してサポートをしています。
ケニアで新たに支援を受けてもらう予定のシングルマザー達との面談の中で、カウンセラーの心を動かしたシングルマザーを今日はご紹介したいと思います。
5人の子ども達に教育を受けさせたい!
彼女の名前はリディア(41歳)。9年前に夫をHIVで亡くしました。そして彼女自身もHIVとともに生きています。リディアには5人の子どもいます。そして、彼らがそれぞれ将来の夢を叶えることを心から願っています。
地元の特別学校で臨時スタッフとして働いていますが、月収は2,500ケニアシリング(日本円約2,700円)、5人の子ども達と暮らしていくには、正直とても厳しい金額です。
リディア自身は授業料が払えず小学7年生(日本で中学1年生に該当する)の時に退学を余儀なくされました。そしてほどなく結婚したため、高収入のより良い仕事に就くことはできないと話します。
学歴の問題で、彼女自身が良い職を得て、高い生活水準を目指すことは難しくなったと言います。だからこそ、自分の子ども達にはよりよい教育を受けさせて、夢とキャリアを達成させて欲しいと、日々頑張って働いているのです。
サロンか仕立屋を始めたい!
実はリディアは、学校を中退した後、非公式ではありますが、ヘアドレッシングと服の仕立てのトレーニングを受けています。
なので、「いつかサロンか仕立屋を開業して、もっと収入を増やしたい!」という夢がリディアにもあるのです。しかしながら、開業資金を貯めるような余裕はなく、未だ叶えられずにいます。
よって、現在のリディア一家の最大の課題は、どうやって5人の子ども達の教育費を捻出するかということになります。
義理の兄弟の助けを得るものの・・・
彼女は義理の兄弟の協力を得て、長女のバイオレットを高等教育の4年生(日本でいう高校3年生)まで行かせましたが、大学進学の費用を支払う余裕はありません。
長男のウェリントンは現在小学6年生で、将来は教師になることが夢だと教えてくれました。
次男のチャーリーは現在小学4年生、4番目の子どもは小学2年生、そして末っ子のポールはまだ1歳です。
支援が決定!
協議の結果、リディアと長男のウェリントンに今回のプログラム支援を受けて貰うことが決定しました。
リディアは、プロジェクトを通して子育てに関するカウンセリングを受けられることをとても喜んでくれました。なぜなら、対象は長男だけではありますが、結果的には、得られた経験や情報が他の4人の子ども達のためにもなるとわかっているからです。
そしてリディアは、ウェリントン自身もプロジェクトが提供するキャリアカウンセリングから大きな恩恵を得られると信じています。
そして、リディア自身もいつか経済的なブレークスルーを得て、ウェリントンと兄弟達が中学校に進むことを望んでいます。
未来を変えていく希望を胸に
プロジェクトの支援が受けられる希望を胸に、リディアは熱心に子どもの世話を続けるようになっていますが、面接時の事前調査によると、彼女の育児スキルはまだ基準を下回っている部分があり、今後はより多くの助言が必要です。
リディアによると、長女のバイオレットの教育資金を義理の兄弟から援助してもらった以外では、個人や組織からの支援を受けたことは、一度もないそうです。
そして、子育てに関するアドバイス等も受けた事がないため、今回のプロジェクトにしっかりと専念し、カウンセリングを通してたくさんの事を学びたいと意気込んでいます。
そして、彼女はプロジェクトからの支援を受けた成功例として、記録に残ることを待ち望んでいると話してくれました。
見えないものを信じる力
多くの人々が「物質的なサポート」を強く期待している中、リディアがこのプロジェクトに興味を持ったのは、カウンセリングセッションが受けられるためでした。
彼女は未だ経済的な問題に直面し続けていますが、カウンセリングが人生の大いなる助けになることを期待してくれています。
リディアのストーリーは、現地のカウンセラーにとって、とても印象的で、仕事への更なるやる気を奮い立たせてくれるものでした。
この報告を受けて、私たちPLASも彼女とプロジェクトが出来ることをとても楽しみに思っています。
こうした支援を続けることができるのは、日本から支えてくださる支援者のみなさんのおかげです。本当にありがとうございます!これからもみなさんのご寄付、応援をアフリカにしっかりと届けてまいります。