事務局長の門田から、ケニアプロジェクトのご報告と今後の展望についてお届けします。
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PLASは今年から、ケニアでの事業展開を開始しました。
Nyanza県のUkwala地域で2月に第一回国際ワークキャンプを開催し、農業のスタートアップを地域の学校で行ないました。
本事業の目的は大きく分けて三つあります。
一つは学校の中で農業事業をスタートさせ、そこで得られた収益ををエイズ孤児たちの制服代やテキスト代にまわし少しでも多くのエイズ孤児が教育を受けられるように地域に貢献すること。
二つ目に地域でのエイズ啓発活動、そして三つ目に参加したボランティアが多くのことをケニアで学び、その学びを日本で発信するということです。
一つ目の農業事業については、計画、立案段階から学校が主体的に事業を主導し、地域住民組織や行政、ケニアのナショナルNGOと協働で実施しました。
事業は開始したばかりで、まだ収穫には至っていませんが、今後収穫、販売後、収益が上がった暁には学校を通して事業の利益はエイズ孤児たちのために使われます。
また地域住民組織が第三者機関として学校や受益者となる子ども達へのモニタリングを行うこととなっています。PLASは農業のノウハウを十分に持っていないため、活動の中で、地域やナショナルNGO、行政とともに事業を開始するに当たって、困難なことや力不足であると感じることも少なくありませんでした。しかし、そのような中で、地域と行政、学校、そして子ども達を結び、農業によって子ども達に利益が還元されるしくみ作りをバックアップすると共に、地域でのエイズ啓発活動を行ったことは、大きな意義があったと感じています。
この地域の半分以上の人々は老人と子どもであり、働けない世代です。
さらにほとんどの孤児たちが60歳以上の老人によって世話をされており、多くの家庭はほとんど収入が無いのが現状です。
この様な地域では、学校での農業という地域の中での持続可能な事業を展開することが重要です。
この事業はPLASが撤退した後にも、学校と地域の中で継続される可能性が十分にあり、また多くの子どもが恩恵をうけることができるのではないかと期待しています。
二つ目のエイズ啓発に関しては、PLASにとってケニアでの初めてのワークショップであり、全てが初めての中で行われました。孤児たちへの直接的支援だけでなく、地域でエイズ孤児を増加させている、HIV/AIDSそのものの脅威から人々を守る必要がり、今回はエイズに関する演劇などを通したワークショップという形でエイズ啓発を行いました。
この地域の多くの人は、普段ラジオやテレビ、新聞にさえアクセスすることが難しくエイズの感染経路等の基本的な情報を得る機会がほとんどありません。
地道な活動ではありますが、地域の人々が参加しやすい方法でエイズ啓発を継続していくことが重要なのではないかと感じました。
また、地域住民組織やナショナルNGOが大変協力的であり、PLASの力だけではワークショップの成功はありえなかったでしょう。
自身のステイタスを知ることを怖がるためにエイズ検査をなかなか受けることのない地域の人々へ無料のエイズ検査を提供し、多くの方が検査を受けたことは大きな成果であったように思います。
三つ目の、参加したボランティアに対する開発教育的な意義は、大いにあったのではないかと感じています。
日本のメディアを通して伝えられるアフリカ、ケニアは悲惨さをアピールするようなものが多いように思いますが、実際に参加したボランティアたちはアフリカ、ケニアの豊かな文化や自然、人々に触れ多くのことを感じ、学んでいたのではないでしょうか。
その一方で、地域の抱える多くの問題を目の前にし、問題の大きさ複雑さに面くらい、この小さな事業がどれだけ地域にとって意義がありインパクトがあるのか、ボランティアたちが自問自答する場面もありました。事業に参加するボランティアが地域へ直接貢献できるのはほんの2週間です。
しかし、その中で、多くのことをこの地で学び、エイズ孤児たちの現実を少なからず目にすることができました。この事業は事業実施の2週間のみが効果を持つのではありません。
事業後に参加者たちが広く社会へこの地域の現実を発信し、少しでもエイズ孤児たちの現実を伝え、より多くの人がアフリカやエイズ、エイズ孤児に関心を示すよう、ひいては市民として社会そのものを変える原動力となることを期待しています。
この農業事業が軌道に乗り、学校が収益を上げることが可能になれば、次期の農業事業の資金を学校自ら捻出することが可能です。本団体はこの学校での事業をロールモデルとして、農業事業が可能である地域、学校で今回のノウハウを生かし、同地域の他校で同様の事業を展開しようと計画しています。そしてこの事業を同地域の多くの学校で実施することによって地域全体の教育普及の底上げを目指します。
事業を通して、エイズ孤児を始めとする子ども達に本当に必要なのは「愛情と教育、安全、安心」の4つであると、私は感じています。
しかしながら、社会に無視されて、子どもとして過ごす「子ども時代」を失っている子どもが本当にたくさんいます。
目の前にいる子どもだけではなく、 まだ見ぬ1500万人のエイズ孤児の未来に、 5年後には1800万人にも膨れ上がるといわれているエイズ孤児たちの未来に、 光をあてるべくPLASはまい進してまいりますので、今後ともどうぞ応援よろしくお願いいたします。
最後になりましたが、本事業にあたり、多くの方のご協力とご助言、ご支援をいただきましたことを、ここに厚く御礼申し上げます。
PLAS事務局長 門田瑠衣子