それまでヨナス・タデセはHIVがもたらす症状に科学と信仰を融合させた処置をしてきた。
彼は抗レトロウィルス薬を服用する一方、神父から頂いている1リットルの聖水を飲んでいた。
これまで、エチオピア正教会でこの対処法は物議を醸してきた。
だが、エチオピア正教会の指導者、Patriarch Abune Paulos氏が先日、首都アディスアベバの教会で250人の信者を前に彼の考えをこう示した。
「私は、すべての人に、薬と聖水を一緒に飲んでもらうようお願いしたい。これらは決して対立するものではないのだから。」
Paulos氏が教会でこう語ったのは、昨年11月に薬と聖水との整合性に関して氏が発表した宣言文にもかかわらず、正教会の多くの神父たちが、患者にどちらかを選択するよう諭していたことにある。
41歳のヨナスは、教会でPaulos氏の言葉を聞いて、
「とても安心した。これまでは薬の服用を止めるように言われていたから」
と語った。
人口の約半数が正教徒のエチオピアでは、霊的な治療が医薬品での治療と同等に扱われることが多いという。
アディスアベバにある病院では、患者の約半数が薬と一緒に、時には1ガロンにもなる聖水を飲んでいるという。
少年への差別を防ぐために氏名は伏せるが、同病院に入院している親をエイズで亡くした14歳の少年は、聖水と一緒に薬を服用することが罪でないことに安堵している。
「薬を飲み始めてから、気分が良くなってきたんだ」
と語る彼は、入院したときの体重がわずか約20㎏で、死に限りなく近い状態だったという。
数ヵ月後には27㎏まで増え、復学も可能になった。
また、ある女性患者はこう語った。
「これで、聖水に加えて、薬にも希望が持てるようになった。」
原題:Ethiopia Official Backs AIDS Treatment
日付: 24 May 2007
出典: The Assiciated Press