アフリカ北西部にあるマリの首都、バマコにあるGabriel Toure病院。祖母と思われる女性たちが、病院の遊び場で子どもたちと一緒に診察の順番を待つ。祖母たちは、自分たちの子どもをエイズ関連の病気で亡くし、HIV感染した孫たちを病院に連れてきているのだ。この病院でエイズ治療を受けている子どものおよそ60%が、両方、又は片方の親を亡くしているそうだ。
今年61歳になるAminata Soumaoroもその一人。自らの子どもをエイズ関連の病気で亡くし、HIV感染した孫の世話をしている。彼女の娘は妊娠3ヶ月で他界、娘の夫も病気で大変な状況にあった。小さな体で産まれた孫はかろうじて生き延び、大きくなった。彼女は「自分の娘を失ったように、この子は失いたくはない。」と考え、治療費を捻出。経済的に困難な状況にありながらも、孫にエイズ治療を受けさせることにした。
この病院の小児科医であり、エイズ治療に精通しているAnta Koita氏は次のように話している。「祖母たちは、親を亡くした子どもを育てていくことに戸惑うことも多い。それに、エイズやその治療に関する知識も乏しい」。HIV感染した子どもたちの体はどういう状況にあるのか、治療を継続しなかったらどうなるのか、などを知る者は多くない。
この病院で抗レトロウイルス治療を受ける935名の子どものうち、定期的に病院に通っているのはおよそ半数。マリ厚生省によると、これまでにマリで抗レトロウイルス治療を始めた子ども1,428名のうち約3分の1は治療をやめてしまっているそうで、その理由は様々だ。小児科医であるAnta Kota氏は、「HIV感染が発覚した時点で家から追い出されてしまう子どもも多い」と言う。また、例え追い出されないにしても、金銭的に治療が続けられない場合もあるようだ。
エイズや治療に関する知識が浸透していないのは課題の一つ。抗レトロウイルス薬は一旦服用を始めたら定期的に服用しないとその効果が薄れてしまう。薬の誤った服用により、その効果を実感できない人も少なくない。HIV感染者たちが薬を手に入れることができたとしても、必ずしも“効果がでている”とは言えないようだ。治療薬と服用に関する正しい知識を広めることは必要だ。
ユニセフ協力の下、マリ政府は、エイズ治療ができる場所をこれまで以上に増やし、遠くから都市部の病院に通う感染者とその家族の肉体的、精神的負担を減らすようにしている。また、一般の小児科医にもエイズ治療の方法を教え、より多くの小児科医が子どものエイズ治療をできるように訓練している。HIV感染した子どもとその家族が社会的、精神的サポートを受けられるよう、マリ政府は対策を進めている。
(訳:大場菜生子)
原題: HIV-Positive Children ‘Missing’ From Health System
日付: October 14, 2009
出典: IRIN News
URL : http://www.irinnews.org/Report.aspx?ReportId=86570