クワズルナタル州は、HIV/エイズが蔓延している南アフリカ共和国の中でも特に感染率が高い地域である。しかし、医療施設を対象に同国政府とウィットワーテルスランド大学の母子保健研究科(MatCH)が実施した調査によって、州の約3割の病院がここ数年間HIVに感染した乳幼児に抗レトロウイルス薬(以下ARV)の処方を全く行っていないことが分かった。
MatCHは、同州にあるダーバン市の主な病院10施設を対象に、過去3年間ARVを処方されている15歳以下の子どもの数をARV登録記録と州政府が定期的に報告している統計を基に調査。結果、10ある病院のうち3施設はHIV陽性の乳幼児の処置を行った記録がなく、2施設は11人またはそれ以下の乳幼児にしか薬を処方していないことが判明。
「ARVが必要な子どもは多くいるが、彼らにARVが行き渡るための努力はほとんど行われていない。」とMatCHの研究員、ラビカンティ・ラピティ氏は話す。市のテクウィニ地区にはおよそ93,000人のHIV陽性の子どもが存在するそうだ。
2008年に同国が取り入れたARV治療法は、母子感染率を5%まで下げることが可能だ。しかし、先ごろ同国政府が提出したHIV/エイズ戦略計画の経過報告によると、HIV陽性の母親を持つ乳幼児のうち約40% が、母子感染予防の体制不備のため、感染のリスクにさらされている。また、近年改定された同国HIV 治療指針によれば、ARVの服用はHIVに感染している全ての1歳未満の乳幼児に適切な処置であり、UNICEFは服用しない場合3分の1の乳幼児が1歳を迎えないまま亡くなってしまうと発表している。
本調査は、HIV陽性の子どもとHIV治療の間にある大きな2つの壁である、医療従事者の同国HIV治療指針の理解の低さ、そして自分の子どもにHIV検査を受けさせたくないという母親の心情を明らかにした。
これらの問題を改善すべく、MatCHは医療従事者を対象にARV治療のトレーニングを開始。加えて、大人と子どものARV治療の違いが分かるポスターを作製した。一部医療機関では、看護師を対象とした乳幼児のARV治療に関するセミナーを、従来のように週に1度ではなく1日で実施。看護師の時間や交通費の浪費を考慮した上での対策だ。さらに、MatCHとその協力団体は、読み書きが出来ないHIV陽性の子どもの保護者でも適切な処置を行えるよう、薬の順番や医療器具が分かる良案を提示した。また、同氏はカウンセラーと共に待合室にいる母親と直接対話する試みを開始。会話の内容は低体重や低身長などを含む乳幼児の健康全般から、HIV検査についてまで様々だ。
(翻訳:足立真希)
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原題:SOUTH AFRICA: Hospitals failing to treat HIV-positive infants
日付:November 2, 2010
出展:IRIN News
URL:http://www.plusnews.org/Report.aspx?ReportId=90954
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