自宅から15キロ離れているクリニックで、エイズ孤児である5歳の孫にART(抗レトロウイルス治療)を受けさせるための資金を捻出するため、80歳の祖母は所有している3羽のニワトリ全てを売ることが必要だった。
3羽のニワトリから得られた収入はわずか6ドル。そのうち、2ドルは往復の交通費に、3ドルは医療カードの購入と登録費に消えた。残りの1ドルで、体力が落ちているエイズ孤児のためにバナナを購入した。
医療にアクセスするために資産を売却するといった状況は、HIVやエイズの影響を強く受けている農村地域では珍しい光景ではない。HIV陽性者支援団体のFACT(Family AIDS Caring Trust)が実施した全国規模の調査結果によれば、HIV陽性者やエイズ孤児を引取っている家庭などの多くが経済的に困窮している。現金が限られている家庭では、医療サービスを受けるのに必要な諸経費を、家畜や資産の売却で捻出している。
FACTのマゲジ氏は、多くのHIV陽性者やエイズに影響を受けている人々の医療費負担が限界に達しつつあると語る。農村地域では、ARTの諸経費を捻出できるのは日雇い労働などで資金を調達できる若者に限られてしまっている。ジンバブエではARV(エイズ治療薬)が無償提供されているが、手続きにかかる費用や交通費がARTを必要としている人々を遠ざけている最大の要因となっている。エイズ孤児を引取っている祖父母などは、所有している唯一の資産であるニワトリやヤギを売却し、医療施設への交通費を捻出せざるを得ない状況だ。
政府がARTを全国で普及させるのであれば、現在首都圏に集中しているHIV/エイズ関連サービスを、農村地域にも拡大させる必要がある。医療従事者は病院やクリニックでのみ医療を提供するのではなく、農村地域へも出張可能にするなどして、経済的に困窮している家庭や障害者も医療を受けられるようにすることが望ましい。
(文責:大島陸)
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原題:Zimbabwe: Rural HIV Affected Sell Domestic Animals to Access Art
日付:11 July 2011
出典:Sokwanele
URL:http://www.sokwanele.com/thisiszimbabwe/archives/6881
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