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【Weekly News】ケニア: 地方での HIV 治療向上に不可欠な資金提供

2006年にクリストファー・オカンガ夫妻の HIV 陽性が判明した当時、彼らは子供を持つことをあきらめるしかなかった。

「私たちは当時結婚したばかりで、子供が欲しいと考えていました。そんなある日私は突然体調を崩し、病院で治療を受けました。その時にボランティアのカウンセリングセンターを紹介され、検査の結果 HIV に感染していることが分かったのです」 ケニア西部州キリンギリの自宅でオカンガ氏は話した。

その後妻のチェルティッチさんも HIV 検査で陽性となったため、二人は最寄りの病院で治療を受けることを決断した。しかし二人が通院したキリンギリ保健センターは自宅から最も近い病院とはいえ 60km も離れており、何よりも当時 HIV サービスに対する準備は整っているとは言えない環境だった。

「私は長い距離をかけて治療に通いましたが、ここではあまり良いサービスは受けることができませんでした。患者数がとても多かったのに対して看護婦の方々の数が不足していたため、全ての人に十分な治療をするだけのリソースがなかったのです」 。オカンガ氏は語る。

2008年、キリンギリ保健センターは、米国国際開発庁(USAID)支援のプログラムである「エイズ・人口・保健統合援助」(APHIA Plus)の活動により、 「エリザベス・ グレイザー こどもエイズ基金」 の援助を受けることを決定した。

資金的な援助を得た同センターは HIV サービスの提供を開始し、HIV 母子感染の防止への取り組みが始まった。現在、オカンガ氏とチェルティッチさんは HIV 陰性の子供を持つことができた。

2011年、同保健センターで産まれた39の新生児のうち、HIV 検査の結果陽性と認められたのはわずか一例だった。出産に同センターを利用する女性の数も順調に増加している。「地方で子供の HIV 陽性が認められるケースは、多くの場合自宅で出産を行っていることが原因と考えられます」 。オンボゴ氏は語る。

ケニア北部のキミリリ地区病院に勤務する看護師のディナ・アカリ氏によると、保健施設での HIV サービスの向上は、患者だけでなく医療関係者にとっても有益であるという。

「医療に携わる者として、HIV 患者に対して良いサービスを提供できるのは重要なことです。正しいサービスを提供できるという確信を持つことができますし、患者としてもここに来れば必要なサービスを受けることができるという信頼を得ることができます」。

一方、資金が十分でない医療施設では、助けを求めて訪れる人々を救えないことに憤りを感じる職員がいる。「訪れる母親には、検査の結果 HIV 陽性が判明すると、我々は治療を行うことのできる別の施設を紹介します。しかし実際にそこへ行く人は果たして何人いるのか、我々は把握できていません」 。ケニア西部ボンド地区のゴベイ保健センターに勤務するヘリーン・オニャンド看護師は語る。

ケニア西部で活動している APHIA Plus 代理部長のマイケル・アウド博士は、HIV 撲滅のためには地方に対する資金提供が不可欠だと語る。

政府援助の増加

ケニアはHIV サービスに支出する資金として、2013年までに約16.7億ドルを見積もることとなった。2010年には国からの支出として前代未聞の規模となる9億ケニア・シリング(約1050万ドル)を計上、抗レトロウイルス(ARV)治療薬の購入費に充てているが、それでもARV治療薬は 約60万人分も不足しているのが現状だ。

ケニアの医療サービス大臣を務めるピーター・アニャン・ニョンゴ氏は、これまで献金に頼り切ってきた資金の問題を解決するために、今こそ政府が自ら保険プログラム資金を設立するべきだと訴える。

「私たちは保険プロジェクトの設立に際し政府が中心的な役割を果たすべきだと考えています。こうすれば今までよりも持続的な形が実現できます。自分たちの問題は自分たちで賄うのです」。

「寄付者の厚意によりプログラムが成立している状況では施設間の資金の不平等を生み、結果的に素晴らしい業績を挙げる地域とそうでない地域の差が発生します。ここで政府が役割を果たし、全てのプログラムや施設に対し平等に資金を振り分けるような形を構築するべきではないでしょうか」。

(文責:川崎涼友)
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原題:KENYA: Better funding key to improving rural HIV care
日付:December 1st, 2011
出展:PlusNews
URL:http://www.plusnews.org/report.aspx?ReportID=94356
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