ウガンダの記事が続きましたが、今回はケニアの母子感染予防事業について進捗報告です。
今月は2週間にわたって啓発リーダーのリフレッシャー研修を実施しました。
4日間×2回、ハードではありましたが、私にとっても学びの多い機会となりました!
研修は毎回参加者に合わせて内容を構成しており、今回は以前のリフレッシャー研修で参加者から好評だったディスカッションを多めに取り入れることに。一つの大きな輪になって話し合う機会を持つことで、一部の人からだけではなく全体から万遍なく意見をもらえること、また気軽に意見を出してもらう中で啓発リーダーたちの“ホンネ”が聞けるのが大きなメリットです。
今回のディスカッションでは、HIV感染を蔓延させるリスクのある文化的慣習や、家族間のコミュニケーションを題材に話し合いを行いました。特に文化的慣習についての話し合いでは、これまでに聞いたことのない独特の慣習が啓発リーダーたちから次々と紹介され、興味深い話が聞けました。
ルオの伝統文化で代表的なものとして、未亡人となった妻を相続する制度があります。もともとルオ族は一夫多妻制をとっており、未亡人を引き取ることは地域でセーフティーネットとして機能していたと考えられます。
この未亡人相続の慣習は、ルオ族でHIVが蔓延することになった原因の一つと言われています。なぜだと思いますか?
未亡人を相続すると決定した場合、その新たな夫婦は“儀礼”として性交渉を持たなければならず、正式な“儀礼”のためには性交渉にコンドームを用いてはならない、という習わしのためです。
もし、亡くなった夫がHIVが原因で亡くなっていたら?
妻であった未亡人もHIVに感染している可能性は高く、そこから相続先の夫に感染し、その夫からさらに第一夫人や他の妻へと感染が拡がっていくことになります。
地域で暮らす啓発リーダーにとって、このような文化慣習を否定するのはとても難しいことです。住民からの反発を受けることも容易に想像がつくデリケートな内容だけに、啓発リーダーたちのアプローチ方法がとても重要になります。文化を頭ごなしに否定するのではなく、どこにHIV感染リスクがあるか理解した上で、必要に応じて予防策をとるように促していく必要があります。
研修も残すところあと1回。「正しいこと」を押し付ける人ではなく、住民に寄り添いながら行動変容を促すことのできる啓発リーダーたちを育成するために、どんな内容にしようかなーと今から思案しています。
文責:谷澤