PLASの現地活動現地レポート

ケニアレポート -エイズ孤児のカウンセリング事業を開始しました-

ケニア共和国では100万人以上の子どもたちがエイズで親を失い、孤児となっています。
孤児となった子どもたちは、祖父母や親戚の家に預けられますが、預け先の家計が厳しく、世話をしてもらえない場合も多くあります。
また、新しい保護者と子どもたちは、一から関係を作り家族となっていきますが、お互いに向き合い方がわからなかったり、良い関係をつくることができず、結果的に保護者側が育児放棄してしまうケースも少なくありません。

プラスでは、新しいプロジェクトとして、孤児となった子どもたちと引き取り先の保護者に対して、心理的及び社会的な両面からカウンセリング支援を提供する活動を開始しました。半年ほどのロジェクトですが、このプロジェクトを通し、地域にカウンセラーを育成し、100名のエイズ孤児たちをサポート、地域に貢献することを目指します。

このプロジェクトは、ケニアのNGO、SWAK(スワック)をパートナー団体とし、プラスとSWAKが共同で行います。また、LUSHチャリティバンクにより助成をいただいております。

プロジェクトでは、子どもたちへのカウンセリング提供をメインに行いながら、子どもを引き取った家庭を巻き込み、子どもたちと新しい保護者の間で信頼関係の構築を支援し、継続的に子どもたちが新しい保護者の元で就学、保護され、豊かな人生を送ることができるよう活動を行います。

カウンセラーのフェルゴンさんから、素敵なメッセージが届いていますので、ご紹介します。

私の名前はフェルゴンです。現在49歳でケニア市民、夫を亡くしているシングルマザーで、子どもとメニヤッタのスラム地域に住んでいます。
2005年SWAK-NYANZAという団体からチャイルドカウンセラーになるための研修を受け始めました。

私がチャイルドカウンセラーになりたいと思ったきっかけは、夫を亡くし、シングルマザーになった事、そして職業として先生だった事が大きな要因です。
そのためにSWAKでの研修をうけ、その後は看護学校に通い始め、様々な環境で悩みを抱えている子供たちをカウンセリングして救いたいと願うようになりました。
2014年の7月に研修を終え、私はカウンセリングへの理解と見識、そして知識を得ることができ、これを期に子ども達にもっと意味のある、ケアが充実したカウンセリングができるようにしたいという思いがつのりました。 また、カウンセリングの研修を通じ、子供達と信頼感のある関係性を築くことができました。これはプラス、そしてSWAK-NYANZAさんのおかげです。ありがとうございました。

私自身、HIVに侵されていましたが、それを認識したのは夫の死後でした。私達夫婦は1年間薬草を使った治療を行い、HIVを治そうと試みましたが、夫の健康は彼が亡くなるまで悪化し続け、ついには夫を死においやりました。

彼の死後、彼の親戚は私もHIVですぐに死んでしまうのだろうと考え、私の土地や財産は夫の親戚に奪われ、私にはなにも残っていませんでした。 
職場でも、教員としての役職からは外され、トイレの清掃員として働かなければなりませんでした。

HIVのせいで近所では‘あのやせ細った人‘などと呼ばれ、侮辱をうけました。
それだけではなく、体中にあった発疹のせいで誰とも握手さえしてもらえませんでした。それはまさにHIVからうまれた一種の差別でした。

その様な環境の中でもパメラ オゴイというSWAKの一員だった女性が私に希望を与えてくれたのです。彼女は栄養たっぷりのポリッジ(オートミールなどに牛乳をいれて作るお粥)を白血球を増やすためによく与えてくれました。

今では小さな子ども達のための教育活動を運営しており、2歳から7歳までの子供たちに適切な教育を与えられるよう活動しています。 
私は今までに75人の子供達を里親の家族へ送り出してきました。それが続けてこられたのは私の教育に対する熱意であり、孤児ではなく、誰かの家族の一員として生きていって欲しいという子供達への願いが強かったからです。

また現在、私はHope For Childrenという団体の中の大使としてエイズに侵された人たち、そしてエイズ関連で苦しい思いをした人達を助ける活動をしています。さらにサポートグループも立ち上げ、講演なども行っています。 

最後に、神のご加護に生きている限り、私にも子ども達にも不可能な事などないのです。深く感謝しています、ありがとう。


7月に研修を受けたカウンセラーのみなさん。

本プロジェクトは、以下の5つの活動によって構成されています。
1.チャイルドカウンセラーによる個別相談
本プロジェクトでは10名のチャイルドカウンセラーがそれぞれ10名程の子どもを担当し、個別カウンセリングを実施します。子どもたちの精神的サポートのために相談事を聞くだけでなく、家庭での様子を確認し、子どもたちと保護者(祖父母や親戚である場合が多い)との信頼関係の構築を促していきます。

2.チャイルドカウンセラーのための月次振り返り会議の実施とフォローアップ研修
10名のチャイルドカウンセラーは月に一度、一堂に会し、よりよいカウンセリングのための情報交換やフォローアップの研修を行います。

3.子どもフォーラム
月に一度、カウンセリングを受ける子ども達、チャイルドカウンセラーが各地域で集まり、これまでの経験や課題について、発表し話し合う場を設けます。これは、子どもたちが主体的に自分自身を語り、子どもたち同士やカウンセラーらとの関係を構築していく場となります。1回あたり60名程の参加を見込んでいます。

4.保護者フォーラム
カウンセリングを受ける子どもたちの保護者を招き、保護者同士が情報や意見交換、悩み相談を行うフォーラムを3ヶ月に一回程度開催します。子どもと信頼関係を構築していくためのワークショップなどを実施します。保護者30名程の参加を見込んでいます。

5.関係者会議
チャイルドカウンセラーや事業担当者、関連省庁のスタッフら40名程で、本プロジェクトの進捗や課題を共有します。