先日お伝えした通り、プラスでは本年3月にケニアのエイズ孤児を対象にインタビューを行いました。その結果を共有させていただきます。
インタビューを実施したキスムの街並み
1. エイズ孤児とは
エイズ孤児は「片親または両親をエイズで亡くした子ども」と定義されますが、インタビューを受けた20名でも、母親が生存している者(6名)、父親が生存している者(5名)、両親とも亡くなった者(9名)と様々でした。実親が生存している場合でも諸事情により、他の保護者に引き取られているケースも見られました。また親の死は子どもの幸福度に影響していました。
孤児の状況
2. 教育
20名のうち6名がプライマリースクールを修了していませんでした。両親の死亡、経済的困窮、成績が悪いこと、留年回数が多いこと、家事負担が原因として考えられます。セカンダリースクール進学率は全国平均(72%)よりも低い(55.0%)ことが分かりました(プライマリースクールを卒業しても進学できない者もおり、セカンダリースクールに進学したのは11名)。
セカンダリースクール進学率
3. 労働
学校を中退した孤児のうち、現在収入のある労働をしている者は7名で、平均月収は1,111シリング(約1,500円)でした。これはケニアの平均月収(8,900シリング)の約8分の1です。無収入労働も含めると10名が就労していました(家事手伝いを除く)。また現在就労している者の方が、就労していない者と比べ、最終学年(教育レベル)が低いことが分かりました。
就労者(家事手伝い除く)の教育レベル
4. 差別・偏見
HIV/エイズに対するスティグマ(否定的なレッテルが社会的弱者に押し付けられている状態)が地域にあったと答えた孤児は多く、エイズ患者やその家族が「犯罪者」や「性的にみだらな人」と見なされ、社会や地域からの拒絶を経験する孤児を取り巻く状況が報告されました。
差別を受けた経験
5. 年齢によるニーズの違い
幸福度の推移を見ると、幼少期はより高い傾向にありますが、10~17歳で低くなることが分かりました。また学齢期(6-18歳)の子どもといっても年齢ごと家庭ごとに抱えている課題が異なっており、一律の支援ではなく、そのときどきのより重要な課題に対してタイムリーな支援を届けることが効果的であることが示唆されました。
年齢区分ごとの幸福度の違い(5点満点)
6. プラスが注力する事業
インタビュー結果をもとにプラスの理事会では今後ケニアでどのような事業に注力するかを話し合いました。その結果、教育支援(特にプライマリースクールの卒業)と心理的ケアやコミュニティの誤解や差別を軽減する支援に注力することを決定しました。
その他、詳細な情報は報告書をご参照ください。
[エイズ孤児ニーズ調査報告書_2015年6月]
文責:巣内